2024特別講義1NOT MY BUSINESS? 「個人的な問題」からはじめる商いのデザイン 【実践編】

株式会社ロフトワークを迎えた2024年特別講義1のレポート第二弾です。
前半の記事はこちら

1日目終盤から2日目にかけてそれぞれのチームで打ち合わせを重ね、チームごとに取り組みテーマについて考察していきます。
テーマが決定したら、実際に屋台を使用して試販を行いました。場所や販売方法を変えながら、短い期間でブラッシュアップをはかります。
3日目は試販の成果報告と振り返りを行いました。

それでは各チームの取り組みを紹介します。

<Aチーム:レシピマルシェ>
日々の献立に悩む主婦から考えが始まり、より自分ごとの話題として一人暮らしで余らせがちな食材に話が移りました。スーパーでは一個売りやカット野菜は割高の傾向です。大袋を買っても使いきれず余らせがちな野菜を、どのようにすれば美味しく最後まで使い切れるのか。1人暮らしの野菜使い切りに適したレシピを商品とすることになりました。

試販に向けてレシピの選択やカード作成に取り組みます。レシピはお母さんから聞いてきたり実際に作ってみたり。より屋台に興味を持ってもらえるよう装飾にもこだわりました。

割引シール風に見えるデザインには野菜の保管方法が!細かいところまで作り込まれています。
試販では一部売り切れになるほどで、モノとしての魅力とコンテンツが噛み合った提案となっていました。


<Bチーム:おとも>
問題発見の際に様々なアイデアが出ていたチーム。「経験を売ることができるか」という視点で、値引きシールが貼られる瞬間のドキドキや音楽のプレイリストの販売を考えていました。
2日目の授業中に販売地域となるFabcafeKyotoの周辺を散策しました。大通から一筋入るだけで雰囲気が変わる五条通り周辺。地域や気分にあった選曲をすることで散歩のお供に新鮮な音楽体験を提案できるのではないかと考え、オリジナルのプレイリスト販売で進めることに。

プレイリストのタイトルやQRコードを載せたカード制作もこだわりました。
看板も自作の焼印を用いて制作…! 

試販は五条通りと鴨川沿いで1回、FabcafeKyoto内で1回行いました。苦戦気味ではありましたが、1人のお客さんが10枚購入してくれるシーンもありました。場所にあった提案方法や売り手側の正体をきちんと伝えることで改善が見込まれると考察しており、伸び代を感じさせる提案となっていました。


<Cチーム:歩く食べログやさん>
「おすすめご飯屋さんは?」「ネットの情報はありすぎてよく分からない…」そんな悩みから、地域の生の声を集めた食べログのオフライン版を考えました。屋台で会ったお客さんからおすすめの飲食店情報を集め、情報提供をしてくれたお客さんにはそれまでに集めた情報をお渡しします。

まずはやってみようの精神で2日目の授業中から複数回にわたり試販。5月末のFabcafeイベント「Fabmeetup kyoto」にも登壇し、イベント会場でも営業を行いました!
お客さんとのコミュニケーションやフィードバックを大切にしながら、手書きの情報収集からGoogle mapやGoogleフォームを用いたものに変えていく、屋台のスタイルを変える等、常に改善をはかっていました。

金銭が発生する訳でなく単なる情報交換ではありますが、こちらには飲食店の情報が集まってきます。少しずつ価値が増えていく仕組みになっており、様々な取り組みに転用できる提案でした。

今回の特別講義も短期間ではありましたが、企画・制作・営業・振り返りと集中して取り組むことができました。また、屋台という装置を用いたことで、面識のない一般の方々と多くのコミュニケーションを取れた授業となりました。

太田先生が都度触れられていた「三方よし」。売り手側の利益だけではなく買い手と社会にも還元する「三方よし」の精神は、商いだけではなくデザインやものづくりの考え方にも共通することだと感じました。

*三方よし:近江商人の経営哲学であり、売り手によし・買い手によし・世間によしを示す言葉。

ロフトワークの皆さま、ありがとうございました!

24特別講義1『NOT MY BUSINESS? 「個人的な問題」からはじめる商いのデザイン』【講義編】

オープンコラボレーションを通じてWeb、コンテンツ、コミュニケーション、空間などをデザインするクリエイティブ・カンパニー株式会社ロフトワークの方々を特別講師として迎えた「特別講義1」も今年で6年目となりました。

今回は「個人的な課題」に焦点を当て、それぞれの手が届く範囲の課題解決を”商い”を通して実践しました。講師はロフトワークのクリエイティブディレクター太田佳孝先生です。

授業は3日間開催され、京都五条のロフトワーク京都オフィスの1FにあるFabcafe Kyotoにて行われました。

講師の太田佳孝先生は、百貨店で店舗運営と新規事業開発を経験されたあと、デザイン・写真・映像といったクリエイティブ領域のスクールマネジメントに携わられてきました。多くのクリエイターや学生と関わり、デザイン教育にご経験をお持ちの方。現在は多様な領域で理論と実践を横断するディレクションを手がけられています。

<1日目前半>

太田先生から今回のテーマについて説明を受けました。

今年のテーマは「NOT MY BUSINESS ? 「個人的な問題」からはじめる商いのデザイン」

Not my businessとは、「自分には何ら関係ない事」という意味です。

社会の構造も複雑になり未来を見通すことが難しい現在、「人々は」「日本人は」と大きな主語で語ると具体的な対象がこぼれ落ちたり見えなくなったりすることがあるかもしれません。

今回は、自分ごととして捉え、個人の手と目が届く範囲で語ることのできる「小さな主語」を問題発見の起点にします。

そしてその問題に寄り添った小さな”商い”を行うことによって、価値を生み出すことを目標としました。限られた時間の中では商品開発に注力するのではなく、どのように体験価値に意味づけしていくかがポイントとなりそうです。

商いの実践には屋台を使用します。

いわゆる屋台と言われてイメージできる対面式の大きなサイズのものから、昔の駅弁販売員が使用していたような首からかけるだけのコンパクトなものまで用意していただきました。

屋台に立つだけでお店の人という見え方になり、まさに商いを行うための装置です。

<1日目後半>

カモメ・ラボ代表の今村謙人さんから屋台の魅力ついてのお話を伺いました。

今村さんは、自ら屋台を作り出店をしながら、モノや人を繋げる場作りを行ったり、街の未来をつくる実験のコーディネートなどを各地で実践されています。

昨年、屋台実践者や専門家へのインタビューなどを通して、現代の「屋台」から暮らし方、働き方、社会への関わり方などを考える『日本のまちで屋台が踊る』を出版されました。

今村さんが屋台を始めたきっかけは、世界一周旅行中のメキシコ。路上に座卓を出して焼き鳥屋を始めたそうです。屋台は仮設店舗であり、常に実験の場。屋台にすることでコミュニケーションに理由ができ、開かれた手段になることが魅力だとおっしゃっていました。


屋台の使い方や可能性を大いに吸収した学生達。この後は3チームに別れて、個人的な課題の洗い出しとどのように商いに繋げられそうかを考えていきます。

長尾浩幸教授個展「書物の化身」

総合領域の長尾浩幸教授の個展「書物の化身」が開催されます。

 

ながお

会期は2019年5月4日(土)から5月26日(日)まで。場所は滋賀県大津市にある2kWgalleryです。
5月4日には17時からオープニング・レセプション、5月18日には16時からギャラリートークも開催されます。

GWのお出かけや、滋賀にお越しの際は是非ご高覧ください。

長尾浩幸個展「書物の化身」
会期:2019年5月4日(土)–5月26日(日)12:00〜19:00
(最終日17:00まで)月・火・水 休廊
会場:2kw gallery
〒520-0053滋賀県大津市音羽台3-29-1

▪️オープニング・レセプション 5月4日(土)17:00〜
▪️ギャラリー・トーク 「見えるものと見えないもの」 5月18日(土)16:00〜18:00
茂登山清文(名古屋芸術大学・視覚文化)×長尾浩幸

http://www.2kwgallery.com/